TOP > 歯科コラム

   

  


| Dr. | ホームページ

"; print ; print "

";} ?> 骨粗鬆症といい、歯周病(歯槽膿漏)といい、いやな響きの言葉ですね。加齢とともに避けられぬ病気の一つであると思います。骨粗鬆症は、「骨量の減少、骨微細構造の崩壊、脆弱性の亢進と脆弱骨折の増大を来す病態(1993年 国際骨粗鬆症会議 於:香港)」と定義されています。もっと簡単に言えば、「骨がスカスカになり、弱くなった結果、骨折しやすくなった状態」をいいます。最近、区の介護認定の審査に携わる機会を与えられた中で、介護認定を受けている女性の方々に、骨粗鬆症が原因とみられる骨折や痛みによる歩行困難、さらには寝たきりになってしまうケースがあまりにも多いことに驚かされました。 さて、現在、日本の骨粗鬆症患者は約1100万人といわれています。そのうち、治療を受けている人は200万人程度にとどまっています。それは、はっきりとした自覚症状がないため、なかなか治療に行かないということが大きく関係しています。このように、自覚症状がはっきりとせずに治療が遅れ、進行して初めてダメージの大きさに愕然としてしまう、そんな病気のことを、俗に「サイレントディジーズ silent disease」と呼んでいます。骨粗鬆症や高脂血症、高血圧や糖尿病の初期などは、その代表格といえます。 ちなみに、歯周病も「サイレントディジーズ」の1つで、自覚症状が乏しく、気付いた時には深刻な事態に陥ってしまうという病気です。 歯周病になると、顎の骨がどんどん吸収されてなくなってしまいますから、「骨の量が減る」という意味では、歯周病と骨粗鬆症とは共通しているといえます。骨粗鬆症も歯周病もさまざまな原因で起こるものですが、もし骨粗鬆症の人が歯周病になってしまったら、骨が脆くなってしまった分、顎の骨も吸収されやすくなってしまう可能性があります。骨粗鬆症については、近年、診断技術の向上のため、治療法も進歩してきていますが、骨粗鬆症と歯周病との関係は注目され始めたばかりです。もし、骨粗鬆症であるがゆえに歯周病も悪化しやすいのならば、骨粗鬆症のケアを行うことで、歯周病も進行しにくくなるのではないか、という期待が持たれているのです。 過日、大阪にて、歯科医師のための特別臨床セミナーが開催されました。その中で、骨粗鬆症の第一人者である森井浩世先生(日本骨粗鬆症学会 理事長)より、「骨粗鬆症と歯周病との関連を中心に、歯科医師が医療チームに参加して、活躍すべきである」との提言がなされました。セミナーでの話の要点・ポイントは次のようなものでした。 1.骨密度は、40歳前にピークに達する。それ以降は骨成分消耗の年代であり、とくに女性は50歳代以降、骨折の危険性が出てくる。 2.骨粗鬆症のために、歯周組織の骨の骨量や骨密度も低下を来し、歯周組織の炎症は拡大しやすくなる。 3.閉経後の女性では、骨密度と歯周病との関連リスクはさらに高くなる。 4.歯科医師の立場からは、歯周病と骨粗鬆症の関連に注目しチーム医療の一員として、予防に力を入れ、骨折や寝たきり者の減少を図ることが重要である。 皆様ご存知のように、骨粗鬆症は「なる前に予防する」ことが有効といわれています。特に女性では、閉経などに伴って、ホルモンのバランスが崩れると、一気にカルシウムなどが減少し、骨が脆くなってしまいますから、そうなる前に予防することが重要と、医科の世界では教育しています。骨粗鬆症の予防としては、日光浴や適度な運動刺激をはじめ、日頃から不足しがちなビタミンC、B郡、D、葉酸、カルシウムやミネラルなどを摂取することが挙げられます。 本来は、食事でこれらを全て摂取するのが理想的ですが、足りない分はサプリメントを活用することをお勧めします。しかし、一方で、サプリメントに依存しすぎると、却って健康を悪化させることもありますから、まずは普段の食事内容を再考すること(例えば@3食しっかり食べる Aバランスの取れたメニューを心掛ける Bカルシウムの吸収を良くするようなものと一緒に食べる Cよく噛んで食べる Dドカ食いしない Eおいしく食べられる環境をつくる など)から始め、サプリメントでそれを補っていく、というのが賢いサプリメントユーザーといえるでしょう。骨粗鬆症をきっかけに、歯科医師が口腔および歯周病という観点から、全身の健康増進のお手伝いをすることができたら、と願ってやみません。 
バックナンバー